top of page

三寸の祭祀(サムチョンのチェサ)


叔父の祭祀(チェサ)のため実家へ行きました。

日本では親戚のおじさんというのは

母方でも父方でも、またはおばの夫でも

もっと言えば親類ではない近所のおじさんでもすべておじさんと言いますが

韓国では自分との関係性によって呼びかたが違ってきます。

父の兄弟はサムチョン(三寸)。

母の兄弟はウェサムチョン(外三寸)。

おば(父の姉妹)の夫はコモブ(姑母夫)。

おば(母の姉妹)の夫はイモブ(姨母夫)、 です。

同じサムチョンでも、父の兄か弟かによってまた呼び名が異なります。

実家で祭祀(日本の法事にあたるもの)をおこなったおじは父の弟なので

サムチョンまたはチャグナブジとなるのです。

祭祀は先祖の命日に執り行うもの。

それにお正月と旧盆に行う茶礼(チャレ)を加えれば

日本の法事にあたるものはわがやでは年に6回。

十数回にのぼる家庭もあります。

この日は家族の中心となる家(長男の家など)に親戚が集まり

女性達は前日からお供え物の料理をつくります。

現在では旧暦8月15日のチャレを新暦の8月15日に行ったり

(お盆休みなので親戚が集まりやすくなります)

年数回の祭祀を1回にまとめたりする家もあります。

また、知人のクリスチャンのおうちでは

祭祀(チェサ)やチャレはおこなわないとききました。

福岡ではあまりききませんが、東京のほうでは

祭祀のお供え物の料理を受注する業者もあるそうです。

このように時代によって簡素化されたり変化したりしてきていますが

本国(韓国)のほうではどのようになっているのでしょう。

20年ほど前に、韓国から在日二世に嫁いできた女性に取材でお会いした時、

「私の代になったら、ぜったいに祭祀を年1回に減らす」と強くおっしゃっていたことが

印象に残っています。

彼女は在日韓国人の家庭に入ってカルチャーショックを受けたのだそうです。

いわく、私の父はソウルでも古い考えの持ち主だが

在日韓国人の家庭は実家の比ではない。

古い慣習をそのまま守っていて、年に何度も祭祀を行うのでたいへんだ。

夫の両親が亡くなったら、祭祀は1回にまとめるのだということでした。

きっと彼女のだんなさまはご長男なのでしょう。

ご苦労がしのばれます。

在日韓国人は一世が数%にまで減り、今や二世、三世が中心です。

1970年以降生まれの三世10人にインタビューしたことがあります。

在日コリアン文化についてたずねたら彼らの多くが

唯一在日独自の文化を感じるのが祭祀であると答えました。

そして、それはこれからも続けていきたいと大事に考えていました。


 
最新記事
アーカイブ

© 2016 by kotonohasha

当サイトの文章・画像などの無断転載を禁止いたします。

 

bottom of page