川のうた-われはいかなる河か
暗道のわれの歩みにまつわれる蛍ありわれはいかなる河か
前 登志夫
蛍の季節ですね。
今月の「嘉麻のおくら短歌同好会」短歌講座のテーマは川(河)のうた。
メンバーの皆さんの詠草にも蛍を詠んだうたがありました。
おうちの前の川に蛍がたくさんいるのだとか。
冒頭のうたの作者である前登志夫はふるさと吉野での生活を詠いつづけました。
暗い夜道を歩いている時に、自分にまとわりつくように飛ぶ蛍。
まるで自分が河であるかのように。
その感慨を「われはいかなる河か」とうたっているところが白眉です。
自分自身が河なら、その源流はどこか。
水は清いか濁っているか。
どの海に向かって流れているのか。
自分の過去・現在・未来にまでも思いは及びます。
それでありながらことばは固くなく、流れるような美しさです。
一首の中にラ行の音が響いています。