村田光江歌集『記憶の風景』
「かりん」の村田光江さんの第一歌集が上梓されました。
( ながらみ書房 2019年11月16日 2,500円+税 )
おめでとう存じます。
短歌を詠んでいた人が詠むのをやめること、
短歌の世界から離れることを
「歌の別れ」と表現することがあります。
歌の別れの後
そのまま短歌に戻らないかたもありますし
再びうたに帰ってくるかたもあります。
村田光江さんは退職後に短歌を始め、
「かりん」に入会されましたが
7年後、体調不良により短歌を詠むことを断念されたそうです。
その間、10年。
村田さんはその10年間も「かりん」誌を熱心に読んでおられたといいます。
そして2014年に再び作歌を始め、
このたびの歌集上梓にいたりました。
歌集『記憶の風景』より、特に印象に残った作品をご紹介いたします。
少年のごとき声して征きし兄野太き声となりて帰還せし
足病むは辛きことなりされどされど息子に掴まり歩むもまたよし
一首目。出征した兄は変声期はすでに迎えた年齢だっただろうが
声の変化に焦点を絞って、出征中の状況、できごとの過酷さを思わせる。
二首目。育て、見守り、護ってきた子が今は支えてくれる。
その腕の太さ、たくましさ。
息子への母親の情が伝わってくる。