父よ環れ
<2023年9月11日>
おとといは父の命日でした。
亡くなってちょうど20年になります。
次のうたは第1歌集『サラン』(2005年)の巻頭のうたです。
『サラン』は在日韓国人一世の亡き父に捧げた歌集です。
父よ環れ雷鳴とどろく夜を越え玄海灘へ友待つ国へ
このうたを含めてひとまとまりとした「海渡る蝶」(51首)では
父母のことを詠っています。
巻頭から続く父のうた26首は
そのほとんどが亡くなった日の深夜から未明にかけて
私の中から次々にあふれ、
書き留めるのが追いつかないほどだったうたうたです。
かの地より父の渡りて来た日より七十年を刻みし世紀
父よ父ようつむくな我に謝るな遠き目をして不意に黙るな
医師いわく意識なき父涙する「人生の並木道」歌えば
ハイカラな父と答えぬひとり寄る棺のそばにふいに問われて
母国語で父呼び初めし日はまさに永訣のときアボジアボジよ
その風土情熱的で骨太き男を生むと わが父もまた
故国(くに)の土せめて入れまし七十年日本に生きし父の骨壺
十一で渡りし国に逝きしとも父はかえらん 海渡る蝶
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