top of page

『牧水の恋』(俵万智・著)

驚異の大ベストセラー『サラダ記念日』の歌人、俵万智さんが


若山牧水の若き日の恋に


資料はもとより牧水の短歌を読み込んで迫る評伝。


( 文藝春秋 2018年8月30日発行 1,700円+税 )


牧水と言えば宮崎県出身。


俵万智さんは歌集『プーさんの鼻』で若山牧水賞を受けており


現在は宮埼県在住。


牧水とのゆかりがあるが


牧水について書くというのは


その前からの話だったという。


そもそも高校生の頃に牧水の失恋のうたに親しんでいたそうだ。


若山牧水には広く愛唱されているうたが多くあるが


その名歌のほとんどは


若き日の園田小枝子という美しい女性との恋から生まれたものだ。




 白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ



 幾山河越え去り行かば寂しさの果てなむ国ぞ今日も旅ゆく



 けふもまたこころの鉦をうち鳴しうち鳴しつつあくがれて行く




こうした有名なうたの「哀し」「寂し」「あくがれ」には


なべて小枝子への思いが関わっている。


長い髪の美しい人、そして若さよりも陰を感じさせたという小枝子との恋。


牧水にとってはたぶん初めての恋愛であったようだが


牧水は結婚を望みながらも


結局は結ばれずに終わる。


そして別れたあとも


小枝子の存在は


牧水の心身と人生、そしてうたに影響し続ける。


そうした恋愛を俵万智さんが歌人ならではの視点でみつめる。


牧水の短歌についての筆が冴えているのと同時に、


牧水に限らず、短歌というものは・・・ということを述べている箇所もあり、


大いに共感しながら読み終えた。




最新記事
アーカイブ
bottom of page