池本日出美歌集『りんりんと降る』
- momosaran
- 10月12日
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<2025年10月12日>
「かりん」の池本日出美さんが初めての歌集を出版されました。
(本阿弥書店 2025年9月10日発行 2,700円+税 )
美しい印象的なタイトル。
歌集中に次の1首があります。
わが熱量空の深処(ふかど)にあるらしくりん、りん、と降るハナミズキの白
解説は日高堯子さんが執筆されています。
池本日出美さん、第1歌集のご上梓おめでとう存じます✨
母の名は「あさ」
名を訊かれ「夜でもあさ」と笑顔なりヘルパーさんに人気の母は
校庭の芝生を踏める鼓笛隊子らの素足は白くひかれり
亡き母へ宛てたる手紙けふあらず郵便受けに蟻のみが這ふ
戦争の影を求める整理屋さん父の遺品に軍服さがす
もつともつと母乳をあげればよかつたよ断罪のごと片胸失くす
退職者のよりどころのごと人あまた仕事始めの今日の図書館
抗議ビラ手さげの中にまだ在つて問はれてしまふよ共謀罪に
叱ること叱られることなくなりて菩薩のように眉ほそく引く
二十年父のすがたに吊るされてトレンチコートかすか息する
異界へと行かないやうに地下ふかき大江戸線への矢印たどる
夜半あらし桜はなびら吹きあげてわが十二階に置きて静まる
スカートを夜な夜な寝押しせしころに一直線の恋を知り初む
運転士ひとつ警笛鳴らし過ぐ跨線橋で振りし小さき息子(こ)の手に
腸(はらわた)をさらさぬ夫が奥の奥の月蝕のやうな虫歯を見せる
キム・英子・ヨンジャ様 池本日出美です。14首も選んでくださいましてありがとうございます。これからがスタートと思い頑張ります。どうぞよろしくお願いします。