長崎🌼乙女の寮のものがたり②
- momosaran
- 2017年7月4日
- 読了時間: 3分
坂の途中の喫茶「おたくさ」演劇のチラシ置かせてくれたマスター
キム・英子・ヨンジャ 『百年の祭祀(チェサ)』
市電が走っていて「鳴滝」という停留所がある通り。
その道から一本入った通りに八百屋さんがあって、
その横から伸びる坂道を上ると正面に私の学校の正門があります。
学校の少し手前、坂道に面してその小さな喫茶店はありました。
「おたくさ」とは紫陽花のこと。
その昔、シーボルトが、長崎で出会った愛する女性、お滝さんの名前から
この地でみつけた空色の紫陽花の学名をオタクサとつけました。
シーボルトがお滝さんを呼ぶときそのままの音だったようです。
残念ながら、この紫陽花はすでに他の名前がついていたことが
後にわかるのですが、シーボルトの真剣な愛を感じます。
今では長崎では「オタクサ」は品種に限らず紫陽花そのものをさすそうです。
長崎の市花にもなっていて、近くにシーボルトの鳴滝塾もあることから
お店の名前となったものでしょう。
学生寮は学校の裏手からさらに坂道を上ってゆくのですが
私はほぼ毎日このお店の前を通っていました。
在籍していた演劇部は市内の二つの大学の演劇部と劇団をつくっていて
学校の講義が終わったあと、稽古のために他の大学に通っていたからです。
でも、お店に入ったことは一度もありませんでした。
一年生の秋、定期公演でつかこうへいの「熱海殺人事件」をやることになり、
宣伝のために私たち劇団員は地元の放送局の情報番組に出たり、
活水女子大学前のオランダ坂や長崎大学校門前でチラシを配ったりしました。
その一環として同世代がよく行きそうなお店にチラシを置かせてくれるよう
お願いしてまわっていたのです。
とはいえ、一度も行ったことのないお店を訪れて
いきなりお願い事をするのは勇気がいりました。
入ってみると店内は広くはないけれど茶色を基調とした落ち着いた雰囲気です。
ドキドキしながらチラシを手に説明すると、意外なほどすぐにOKしてくれました。
いま考えれば、学校(長崎県立短期大学。長崎の人々からは「ケンタン」と呼ばれて
親しまれていました)のすぐ近くのお店であり、そこの学生からは私達だけでなく
そういうお願いが少なくなかったのでしょう。
でも、その時はうれしくて、マスターのやさしそうな印象が卒業後も残っていました。
ちなみに、演劇の稽古を終えて鳴滝寮に戻るのはいつも午後9時前後。
それから冷えた夕食を食べるんです。
その頃世の中には電子レンジが発売されていたかもしれませんが
寮には無かったし、ガスコンロはあったけれどコイン式でした。
一度の温めなおしに100円を投入することができなくて、
それに確か午後9時を過ぎるとガスコンロも使用禁止だったので、
同じお部屋の寮生が取っておいてくれた食事をそのままいただくことになります。
寮生活をしているうちにこうしたことが当たり前のようになってしまい、
同じ寮にいた友人は冬休みに帰省した際、自宅でも夜遅く帰ったときに
食卓に置かれたごはんをそのまま食べようとして、
「寒いのに…。温めて食べんね。」とお母さんに呆れられたそうです(=^∸^=)
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