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傷口に塩を


覚えていらっしゃいますか?

大ヒットした漫画(劇画)、「愛と誠」を。

1974年には映画化されました。

その際、主人公の太賀誠を演じたのは西城秀樹。

ヒロインの早乙女愛役はオーディションで選ばれ、

芸名も役名と同じ早乙女愛としてデビューしましたね。

私もこの映画、観に行きました。

西城秀樹のファンだったので。

この映画で最も印象に残っているのは、

誠の学生服と学生帽姿に

秀樹の長髪はちぐはぐだったこと。

いえ、大ファンだったんですよ?

でも、ちょっと。

それから、敵対している相手に秀樹がやっつけられている時、

怪我をしているところに相手方から塩を塗りこまれるところ。

い、痛い。

痛すぎる。

なぜかこの場面だけを覚えているんです。

理由はよくわかりませんが、

たぶん、中学生なりに、

え、これって、傷口に塩を塗るっていう言い方(慣用句)を

実際にやっているのね、

っということで記憶に残ったのだと思います。

それからは、この慣用句を目にするたびに

長髪だった西城秀樹が敵にやられている場面を思い出します。

ところで、太宰府市で受けている万葉集講座は

しばらく前から山上憶良の作品を集中的に勉強しています。

今月学んだのは、

「老いたる身に病を重ね、年を経て辛苦(たしな)み、

 また、子等を思(しの)へる歌七首」

(長歌一首・短歌六首。巻五-897番~903番)

この長歌の中に

「痛き傷にはから塩を濯(そそ)くちふが如く

 ますますも重き馬荷に表荷(うはに)打つといふことの如

 老いにてあるわが身の上に病(やまひ)をと加へてあれば・・・」

という箇所があります。

年をとって、その上病気であることの苦しさを

ふたつのことにたとえて訴えていますが

この「痛き傷には…」の部分は

私たちが今も使っている慣用句(「傷口に塩を塗る」)なので

意味もすぐにわかり、

それだけに注目せずにさらっと流してしまいそうになりましたが

先生が、

この「痛き傷には…」は当時のことわざ(言い方)だとおっしゃったので

はたと立ち止まりました。

1300年前と同じ慣用句を、

21世紀のわたしたちも同じ意味で使っているのですね。

言葉は生き物だとよく言われます。

消えていく言葉、新しく生まれる言葉、

意味が変わっていく言葉。

それらがある中で、

千年以上使われ続けている慣用句って、

なんだかすごい。

これからは、「傷口に塩を」という言い方を見聞きしたら

西城秀樹の「愛と誠」とともに

憶良さんの長歌を思い浮かべることでしょう✤


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