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傷口に塩を

  • momosaran
  • 2019年9月8日
  • 読了時間: 2分

覚えていらっしゃいますか?

大ヒットした漫画(劇画)、「愛と誠」を。

1974年には映画化されました。

その際、主人公の太賀誠を演じたのは西城秀樹。

ヒロインの早乙女愛役はオーディションで選ばれ、

芸名も役名と同じ早乙女愛としてデビューしましたね。

私もこの映画、観に行きました。

西城秀樹のファンだったので。

この映画で最も印象に残っているのは、

誠の学生服と学生帽姿に

秀樹の長髪はちぐはぐだったこと。

いえ、大ファンだったんですよ?

でも、ちょっと。

それから、敵対している相手に秀樹がやっつけられている時、

怪我をしているところに相手方から塩を塗りこまれるところ。

い、痛い。

痛すぎる。

なぜかこの場面だけを覚えているんです。

理由はよくわかりませんが、

たぶん、中学生なりに、

え、これって、傷口に塩を塗るっていう言い方(慣用句)を

実際にやっているのね、

っということで記憶に残ったのだと思います。

それからは、この慣用句を目にするたびに

長髪だった西城秀樹が敵にやられている場面を思い出します。

ところで、太宰府市で受けている万葉集講座は

しばらく前から山上憶良の作品を集中的に勉強しています。

今月学んだのは、

「老いたる身に病を重ね、年を経て辛苦(たしな)み、

 また、子等を思(しの)へる歌七首」

(長歌一首・短歌六首。巻五-897番~903番)

この長歌の中に

「痛き傷にはから塩を濯(そそ)くちふが如く

 ますますも重き馬荷に表荷(うはに)打つといふことの如

 老いにてあるわが身の上に病(やまひ)をと加へてあれば・・・」

という箇所があります。

年をとって、その上病気であることの苦しさを

ふたつのことにたとえて訴えていますが

この「痛き傷には…」の部分は

私たちが今も使っている慣用句(「傷口に塩を塗る」)なので

意味もすぐにわかり、

それだけに注目せずにさらっと流してしまいそうになりましたが

先生が、

この「痛き傷には…」は当時のことわざ(言い方)だとおっしゃったので

はたと立ち止まりました。

1300年前と同じ慣用句を、

21世紀のわたしたちも同じ意味で使っているのですね。

言葉は生き物だとよく言われます。

消えていく言葉、新しく生まれる言葉、

意味が変わっていく言葉。

それらがある中で、

千年以上使われ続けている慣用句って、

なんだかすごい。

これからは、「傷口に塩を」という言い方を見聞きしたら

西城秀樹の「愛と誠」とともに

憶良さんの長歌を思い浮かべることでしょう✤


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