いとうせいこうさん
新聞紙面の四分の三を使った
いとうせいこうさんのインタビュー記事が載りました。
(2019.9.13付 朝日新聞 朝刊 オピニオン&フォーラム面)
タイトルは「『違い』を怖がる日本人」。
日本の難民認定が少ないことについて
聞き手(秋山訓子記者)が
ー世界の情勢に無関心というか、想像力を働かせにくいようにみえます。
と問うと、
日本人のコミュニケーション能力が昔に比べて落ちてしまったと思う
と述べています。
-インターネットで誰もがつながりやすくなり、
コミュニケーションしやすくなっているのでは。
と水をむけられると
「ネットでは、自分と同じ意見の人とだけつながる傾向があります。
傷つくのを怖がって、自分の思い通りの答えがないとすぐに落ち込む。
それがコミュニケーションって言えるんでしょうか。」
「個がなくなっている、ともいえると思うんですよ。
自信を失って、想像力も働かせず、自分で判断できないというか。
その場で臨機応変な対応ができないから、
コミュニケーションを避けている。」
なぜそうなったのかときかれて
難しいと言いつつ、
その一つとして
「バブルの崩壊前後くらいから、
損をすることをものすごく怖がるようになった。
それがコミュニケーションに影響していると思います。
損をするコミュニケーションをいやがる。(後略)」
それから、外国人の技能実習生がひどい労働条件のために
失踪や自殺に追い込まれる人もいること、
この春に外国人労働者を受け入れるための新たな在留資格ができたが
議論は駆け足で終わってしまった、
という聞き手の問いに答えました。
私がもっとも注目したのは、最後の部分です。
-想像力を欠き、コミュニケーション下手になった私たち。
いったいどうすればいいんでしょうか。
との問いかけに、こう答えています。
「多様な人を知ること、ふれあうことが大事だと思います。
身体感覚や接触を大事にする。
田舎くさいとか思われちゃうかもしれないけど、
サークル活動って面白い。
僕は小唄のお稽古に20年くらい通っているんですが、
実にいい。
ふだん周りにいる人たちとは
まったく違う経歴や価値観の人たちばかりです。
街中の中小企業の社長とか、
江戸文化が大好きなOさんとか。
彼らの服の着方とかしゃべり方、表情を見て
どんな人か想像したりして。
ただ共通の趣味があるということだけでおしゃべりするんですが、
これが楽しい。
五感で感じ取るんです。」
―身体を使ってですか。
「今、何でも言語情報ばかりだと思うんですよ。
ネットもそうだし、テレビだってYouTubeだって
文字であふれている。
それをただ読み取るだけになっていませんか。
他者と言語以外のふれあいを通じて、受け入れるのです。
大人げないと冷笑的になるのはやめましょう。
それこそ何の得にもなりません。」
いとうせいこうさんの言うサークル活動は
座の文学と言われてきた短歌にも当てはまる気がします。
歌会や短歌サロンにも通じるでしょう。