歌集『早笛』(馬場あき子全歌集)
<2021年10月16日>
10月に入ってすぐに届いた『馬場あき子全歌集』(2021年9月30日発行 9000円+税)
これまでの全27歌集と、歌集の解題、主な馬場あき子論、年譜などを収めた
函入り2冊組の書籍です。
函に入った状態での厚さ、約7,5cm!
さっそく第1歌集『早笛』(1955年・昭和30年)に収められた作品を読みました。
・一尺の雷魚を裂きて冷冷と夜のくりやに水流すなり
・かく言はば子ら一せいに笑はむとはかりごと立て廊下を曲る
・つばくらめ空飛びわれは水泳ぐ一つ夕焼けの色に染りて
たとえばこうしたうたのようによく引用されてきたうたも
歌集の中の一首として読むと
独立して鑑賞する時とはまた違った時代感もあります。
こうした有名なうたとはまた別に
私は次のような作品も
当時の生活が感じられるものとして印象的でした。
・ナフタリンの匂へるセルの着物きて夕べの街にかご下げていづ
『早笛』収録の全作品を読了したあと、
もう1冊のほうに掲載されている
『早笛』の解題(執筆・坂井修一さん)を読みました。
それから、馬場あき子論のうち、
『早笛』に関するお三方の文章を。
すなわち、
「『早笛』読後感」 (窪田空穂) <「まひる野」1955・8>
「『早笛』について」 (武川忠一) <「まひる野」1955・8>
「失策なき人のかなしみ―『早笛』の根底にあるもの」(小高賢) <初出「かりん」1985・11>
こうした評論は掲載誌の年代を考えると
国会図書館にでも行かなければ読めないものではないでしょうか。
それを、こうしてまとめて目にすることができる。
『馬場あき子全歌集』はありがたいです。
この後は私のもうひとつの書棚へGO。
『寂しさが歌の源だから』(馬場あき子・著 聞き手・穂村弘)を手にして
『早笛』について語られたページを再読しました。
この本は2016年に発行されてすぐに大変興味深く読みましたが
(馬場先生のサイン入りです♪)
第一歌集を読み終えてからこうして再読すると
語られていることがよりいっそう立体的に感じられる気がします。
さらに、さらに。
これまでの「かりん」誌を保管している箱の中から、
「さくやこの花」の第1回が掲載されている号を出しました。
「さくやこの花」は馬場先生が2011年から「かりん」誌に連載されていて
ご自身のうたを毎回1首取り上げて書かれている文章です。
『早笛』所収の作品については
第1回と第2回で取り上げられています。
・つばくらめ空飛びわれは空泳ぐ一つ夕焼けの色に染りて
(「かりん」2011年1月号 ・ 「さくやこの花」 第1回)
・秋の夜の玻璃戸を叩く冷雨冴え後(のち)シテをまつ野守(のもり)の太鼓
※歌集では「ハリ戸」
(「かりん」2011年2月号 ・ 「さくやこの花」 第2回)
このように馬場先生の1冊1冊の歌集についてまとめて読むことの充実を感じる秋です。
尚、「さくやこの花」は歌林の会(かりん)のホ-ムページに第1回からアップされています。