井上久美子歌集『マザーリーフ』
「かりん」会員の井上久美子さんの第一歌集が上梓されました。
(2017年7月12日発行 本阿弥書店 税別2,500円)
井上さんは2000年に「かりん」に入会。
宮崎県で生まれ、県外で暮らした後に
再び宮崎で10歳からの8年間を過ごしたそうです。
現在は離れてお住まいですが
集中には宮崎を詠んだうたもみられます。
マザーリーフとはセイロンベンケイソウのこと。
葉を水に浮かべておくと葉先から小さな芽が出て、
葉の裏側からは根が生えて根付くのだそうです。
歌集の表紙はグレー、見返しはペパーミントグリーンという
装丁の色合わせもおしゃれです。
「かりん」の全国大会でお話ししたことのある井上さんは
まさにペパーミントグリーンのようなさわやかな印象のかたでした。
綿シャツの背中にしわを増やしつつ揺られておりぬ春の電車に
黒髪の映える妹NOという言葉はげしく言うようになり
魚からの進化一気にたどるため胎児(こ)はふかぶかとわれを眠らす
子の夢に大きな魚が出てきたか胎動びくびく跳ね回りおり
産むことを選ぶだろうか まだ堅き五歳と一歳の胸を洗いぬ
霧雨にさしだす傘からとびだして濡れてゆくこと選んで吾子は
井上久美子 『マザーリーフ』