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箱舟に載せるもの


先月の福岡県北部豪雨を始めとして、

全国的に大雨や洪水、落雷が頻発していますね。

近年報道で、雨の被害が出た地域のかたの

「長くここに住んでいるけど、今までこんなこと無かった」

という声を見聞きすることが多くなりました。

気象庁が緊急に警報を発表する会見でも

台風や大雨の激しさを「これまでに経験したことのない」と

表現するようになりました。

私も、「こんな(ひどい)雨は生まれて初めてだ!」と

心の中で叫んだことがあります。

2010年代になってすぐの頃だったと思います。

当時すでに「ゲリラ豪雨」ということばが使われるようになっていました。

そのゲリラ豪雨のためしばしばJRが運転見合わせになって

通勤していた博多からの帰宅時間が遅れることがありました。

ある日、博多駅から乗車したときはそうでもなかったのに

最寄り駅に着いた時には雨がひどくなっていました。

駅からクルマを走らせてすぐに

叩きつける雨でフロントガラスが真っ白になり前が見えなくなりました。

必死に目をこらすと、

前をゆく他のクルマは20キロ台くらいのスピードで進んでいます。

いったん路肩に停車することも考えましたが

ひどい雨がますます激しさを増していたので

時間がたてば危険が大きくなると判断して運転を続けました。

「こんな雨、初めてだ!」

恐ろしさをこらえながら自宅の近くまでくると、前のクルマが引き返してきます。

道路が水没して通れないのです。

Uターンして別の道を通りましたが、

自宅から100mくらい手前、もううちは見えているのに

道路が川のようになっていてそれ以上は進めません。

しかたなく、やや高くなっている路肩にクルマを停め、

膝の高さまである濁流の中をを歩きました。

その日の朝は晴れていましたが午後から雨と予報がでていたので

ゲリラ豪雨のことを考えて傘を持つのはもちろん

ショートブーツタイプのレインブーツを履いてでかけていたのです。

そのレインブーツには濁った水が完全に入りこみ

まったく役にたちません。

ずぶ濡れでうちに戻ってすぐ、家族から安否を問う電話がありました。

なぜかハイテンションで受け答えしたのを覚えています。

翌朝、前日Uターンした箇所を通ると、

小さな川の近くのガードレールがくの字にぐにゃりと曲がっていました。

そして、男性が道路を川のように流れる水に流されて

命を落とされたことを知りました。

そのかたは、前のクルマ(女性が運転していたそうです)が

立ち往生しているのを助けようとしてクルマから降りたところを

流されてしまったそうです。

その場所は前日に私がUターンしたところから

300mくらいしか離れておらず、時間も1時間後でした。

朝刊でその記事を読み、亡くなったかたを悼むとともに

改めて恐ろしさが襲ってきました。

その経験の後に生まれたうたです。

   箱舟に何を乗せるか考える時間がいるので今日休みます

                          キム・英子・ヨンジャ


 
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