蘇 ~万葉の時代の超高級品を食す~
ご存じのように、蘇(そ)は古代の、チーズのような食品です。
かつて、これも古代の乳製品である醍醐のことを調べたときに
蘇についても本で読んだ記憶があります。
でもでも、知らなかったんです。
それが現代でも味わえるなんて。
古代と同じ製法で作られたものが奈良県で販売されているなんて🎁
私が食したのは、「飛鳥の蘇」という商品です。
その箱には、考古学者、猪熊兼勝さんが寄せた文章が同封されていました。
わかりやすく、かつ、ロマンに溢れたものなので、ご紹介いたします。
――――これより引用――――
万葉の時代、飛鳥は日本の首都でした。新益京と呼ばれた藤原京は新しく
国家体制もでき、活気にあふれていました。7世紀末の文武天皇の時、
天香具山の南では、飛鳥最大の大宮大寺が建立されつつありました。この頃、
蘇が作られた記録があります。蘇は牛乳をゆっくりと特殊な方法で煮つめた
チーズの仲間ですが、すでに、人々は、牛・馬を食べていますから、
貴族の間ではもう少し前から、この妙なる味が知られていたことでしょう。
おそらく、中央アジアの草原のパオの中で生れた美味な固形物であった蘇は、
はるかシルクロードの道を通り、飛鳥の都へ伝わって来たのです。当時飛鳥には
多くの異国人が住んでおり、彼等が、その製法を伝えたのでありましょう。
ここには、高松塚壁画のような人々が居ましたが、誰もが蘇を口にすることが
できたわけではありません。貴族や高級官人など『日本書紀』の主人公が賓客を
迎える夕べの宴を色どったものでしょうし、貴婦人の美容の滋味でもありました。
高貴な人々が病に臥すと、薬草とともに蘇の効力にも頼ったのでしょう。
つまり蘇は超高級食料ですが、同時に美容と不老長寿も期待されました。
良薬も口に甘しです。したがって黄色の断片は、庶民にとって夢のまた夢の食物
でもありました。
今日、縁あって古代からの珍味は、あなたの口に入ろうとしています。
日本チーズの発生の地で、長い間の苦心によって復原した天香具山の蘇は、
舌の上でまろやかにとけていきます。かつて都が消えてしまったように…。
これが万葉の味なのです。
――――引用ここまで――――
「蘇は牛乳をゆっくりと特殊な方法で煮つめたチーズの仲間」とありますね。
その方法とは、 しぼりたての牛乳を焦げつかさないように7~時間火にかけ、
水分を取ったものを型枠に入れて形をととのえるのだそうです。
さて、どんなお味なのでしょう?
万葉の味ということは、
きのうの記事でふれた大伴旅人や山上憶良も味わったのでしょうか?
現代のチーズとどのように違うのでしょう。
赤みをおびたベージュ色の石鹸のような四角いものを小さな四角に切っていただくと
甘味料は使っていないにも関わらず、ほのかな甘みがあります。
そして、脂質が22.3%あるだけあって、濃厚な味わい。
現代のチーズと食べ比べてみました。
蘇の後に現代のチーズを口にすると、味が強く塩分をしっかりと感じます。
蘇は塩気を感じない分、どちらかというとスイーツのような感じ。
レアチーズケーキをもっと固くして、甘みを軽くしたような味わいです。
生まれて初めて蘇をいただいて、
またまた万葉の時代に思いをはせるのでした。