昭和30年、冬の苺
- momosaran
- 2017年12月13日
- 読了時間: 2分
クリスマスが近づいてきました。
クリスマスといえばケーキ。
ケーキと言えばいちごですね🍓
冬の苺匙に圧しをり別離よりつづきて永きわが独りの喪
松田さえこ 『さるびあ街』
*圧…お 喪…も
尾崎左永子さんが松田さえこ名義で出された第一歌集の中の一首です。
若くして離婚した後の孤独を詠っています。
引用されることの多い秀歌ですが
私は「冬の苺」が他の意味でも興味深いんです。
ご存じのように、苺の旬は春から初夏にかけてですよね。
(20年くらい前、一度だけいちご狩りに行ったことがありますが
その時も子どもが春休みの時期でした。)
でも、苺の需要が一番多いのは今、この時期です。
そう、クリスマスを控えているからなんですね。
ですから、現在苺は冬から春まで出荷されています。
ここで尾崎さんの一首に戻ると、
冬に苺を食すのは今では当然のように思えるかもしれないけれど
1957年(昭和32年)出版の歌集に入っているのですから
このうたはたぶん1955年(昭和30年)頃に詠まれたものだと思います。
その頃、東京ではすでに冬でも露地ものではないハウス栽培の苺が出回っていたのでしょうか。
その食べ方も、スプーンで圧す、つまりつぶして食べるのですから
苺にコンデンスミルクか牛乳をかけているのだと思います。
私も苺にミルクをかける食べ方は好きですが
それは大人になってから知った「おしゃれな食べ方」であって
子どもの頃(1960~70年代)の私は知りませんでしたし、
苺は晩春から初夏にかけてのくだものでした。
そのことを考えると、改めて戦後も長く続いた、東京の生活と地方の違いを思うのです。
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