うるわし、芳雄橋
遠賀川は嘉麻市に源流をもち、
筑豊を貫いて響灘へ向かいます。
飯塚市中心地にも遠賀川に架かるいくつもの橋があります。
2月に原因不明の高熱を出して入院した母は
おかげさまで3週間後に退院できましたが
5月下旬に再びの高熱でまた入院しました。
五月末からは、毎日のように母の病室に通っています。
姉たちと交代するために夕方に行くこともあります。
帰途につくのは夜。
今は夏至を控え、一年でもっとも日が長い時季なので
かなり遅くまで明るいですが
この間は暗くなっていました。
その時に、飯塚市中心部に架かっている芳雄橋(よしおばし)を通りました。
ふだん私が通るのは別の橋で、芳雄橋を通ることは少ないのですが
その、夜の芳雄橋の美しいことと言ったら。
芳雄橋は戦前から市民に親しまれてきました。
なんでも完成当時は全国で3番目のコンクリート造りの橋だったそうです。
それを架け替えることになり、2008年に新しい芳雄橋が架かりました。
事前に市民にデザインの候補2点を公表して
どちらがよいか意見を募ったことは私も記憶しています。
その結果、明治・大正時代を思わせるような趣あるほうが選ばれました。
欄干には御影石を使い、橋脚の表面には自然石が用いられて
石造り風の景観です。
橋の真ん中あたりには屋根付きのバルコニーがあり、
中の島に降りてゆけるよう取り付けられた階段もどっしりとした重量感。
そしてそして、日が暮れる頃になるとともる灯り。
レトロなデザインにあたたかみのある橙色のあかりがともって、
たいへん美しいのです。
高校生の頃は歩いて旧芳雄橋を渡っていましたが、
新しい橋になってからは通ることが少なくなり、
まして夜に通ったことは今回が初めてだと思います。
たまに昼間に通ってもクルマに乗っているので
橋そのものをゆっくり眺めることがありませんでした。
このたび、たまたま母のいる病院からの帰りに夜に通って、
市内に住んでいながら初めてその美しさを知りました。
母の病室に通うことがなかったらこれからも知らなかったかもしれないので
これも母のおかげといえるかもしれません。
いつか、夜の芳雄橋のうたがわたしから生まれる予感がしています。