『家(チベ)の歴史を書く』(朴沙羅・著)
著者の朴沙羅(パク・サラ)さんは1984年生まれの在日韓国人三世。
専攻は歴史社会学です。
韓国語のチベは家という意味ですが
家庭とか家族、一族といったニュアンスを含んでいるように思います。
この書物のことは、新聞の書評欄の広告と著者インタビュー記事で知りました。
興味を引かれて、広告を切り抜きました。
その少し前に、私はあるかたから
私の母のことを書くよう勧められました。
短いエッセイではなく、母の一生を、いわば家族史を。
そのことも頭にあったのだと思います。
その後、福岡市・天神にできた、「本のあるところajiro」
(福岡市の出版社、書肆侃々房が始めた、本屋さん&カフェ。
おもに詩歌と海外文学を並べる。人文科学の本も)
に初めて足を運んだとき、
この本が平積みになっているのに気づきました。
でも、その時は「ねむらない樹」創刊号(書肆侃々房)を買って帰りました。
この本は、仕事の関係で、もう少し後で買うことにしました。
本を買う時は
地元の本屋さんに注文して取り寄せるか
(注文してから1~2週間かかります。
でも、なるばく地元の書店を応援したいので)
急ぎの時は博多駅ビル内の大きな書店で購入するのが
いつもの方法ですが
この時はオープンしたばかりの「ajiro」を応援したい気持ちもあり
二度目に行った時に購入しました。
一度目の時と本の位置が変わっていて
なかなかみつからず
お店の人にたずねると
見当たらないならもう売り切れているかも、とのこと。
それでもあきらめきれず探したら、
棚の奥のほうに横に寝た状態であるのを発見!
そうして持ち帰ってさっそく読み始めたこの本は
とにかくおもしろかった。
著者には大勢の伯父さんや伯母さんがいて
彼らは韓国・済州島の出身です。
(著者の父親は10人きょうだいの末っ子で、日本で生まれたのは父親だけ)
彼らは個性的で、かつ魅力的。
本を読んで爆笑したのは、
いったいいつ以来だろうか。
テレビのお笑い番組を見ても、爆笑することって、あんまりない。
韓半島と日本の近現代史や、済州島で起こった「四・三事件」が
彼らの個人史とともに綴られます。
通常は韓日の近現代史や四・三事件というと
硬いイメージ、暗い事実がつきまとうのでしょうが
この本では、
隣の話のおもしろい人気者のおじさんから話をきくような
親近感や、人間の生活の手ざわりが感じられます。
「はじめに」の文章は、こう締めくくられています。
「だからこれから、大阪と済州との間を行ったり来たりしていた
『面白い』人々の口述史を書いていこうと思う。
それは、歴史であると同時に、たぶん社会学的でもあるはずだ。」
(筑摩書房 2018年9月19日発行 1,800円+税)