中村久美子歌集『青めく夏』
<2022年12月2日>
「かりん」の中村久美子さんの初めての歌集です。
(短歌研究社 2022年10月10日 2,200円+税)
歌集のタイトルにちなんだと思われるブルーの装幀も素敵です。
帯文を米川千嘉子さんが書いておられ、
解説は中津昌子さんが執筆してあります。
掉尾の1首の左には
ご夫君の手による木彫りのフクロウの写真も入っています。
あとがきによると
短歌を始めて10年を区切りに歌集を編むという夢があったそうです。
中村久美子さんとはお目にかかったことはありませんが
その夢をかなえられたことをともに寿ぎたい気持ちです。
中村さん、おめでとう存じます。
歌集より、印象に残ったうたをご紹介いたします。
五歳児の「おすすめです」を引いてやり三回もめぐるジョーカーの札
眠る前言いおくことのあるように紅葉していく里山の木木
空腹は耐え難かろう梅雨さなか甘藷の畝に小さき爪あと
芍薬は大気ゆらして暁に紅き花びらほどきゆくなり
ポケットに摘み帰り来しふじ豆を遅き夕餉の魚に添えぬ
たんぽぽをたくさんつんでくるからと山羊ねだりし娘よ 蒲公英の春
草の実の爆ぜるかそけき音を背に娘への安納芋を掘りおり
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