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大きな一日と小さな一生

<2022年3月13日>


1990年代後半に田部井淳子さんの講演を聴く機会がありました。


田部井さんといえば、女性として世界で初めてエベレスト登頂と


世界七大陸最高峰への登頂を成し遂げた登山家です。


女性として仕事をしていく上で、


そして人生を切り開いていく上で


助言がいただけるのではないかと大いに期待して会場へ出向きました。


田部井さんがおっしゃったのは


「人生は1日1日の積み重ね。


 その積み重ねがその人の人生になる」


という趣旨のおことばでした。


まったくそのとおりです。


何も反論はないながら


実は少し「えっ?」という気持ちをもったことを告白します。


田部井さんのような世界的な登山家のことばとしては


平凡だと感じ、少し意外でした。


もっと力強いことばを勝手に期待していたのかもしれません。


それでも、


田部井さんのこの言葉は


ずっと心の隅に残って忘れることはありませんでした。


4半世紀以上がたった今、


田部井さんのことばがすっと胸に入ってきます。


そう、人生は1日1日の積み重ね。


人生を1日に例える言い方がありますね。


20歳は1日でいえば何時に相当する、という具合いに。


なるほどと思いつつ


私にはそのたとえはあまりピンときませんでした。


ある年齢以上は深夜になってしまうのもなんだかさびしいし。


2年前、コロナ禍になってから


ギリシャの哲学者のことばだという


「1日1日は小さな一生である」に出会いました。


こちらのことばは私の中にすっと入ってきました。


いつまで続くかわからないコロナ禍の中で


自分でも


とにかく先の心配をするよりも


今日1日のことを考えようと自分に言い聞かせていたので


そうか、1日は小さな一生なんだ、と思えました。


朝はなるべく早めに起きて


やるべきことをやり


日中は仕事や家事の予定をこなす。


時々休憩をしながら


夕方になれば活動量をトーンダウンさせて


夜はできるだけ仕事をせずにゆっくり過ごす。


そして安らかな眠りにつくのです。


1日は小さな一生だと思えば


外出もせずに毎日同じような繰り返しの毎日に飽き飽き、


とは思いません。


大事な大事な、小さな一生なのですから。


田部井さんが言われたことばを思い出します。


この小さな一生の積み重ねが


その人の一生になるのですね。









 

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