中津昌子歌集『記憶の椅子』
「かりん」の中津昌子さんの第六歌集が出版されました。
( 角川書店 2021年1月25日発行 2,600円+税 )
まず、装幀からして素敵です。
最初はグレイがかった水色に見えたのですが
すりガラスのような半透明のカバーを外すと
鮮やかなグリーンが現れます。
すりガラス(のようなカバー)を通して白く見えていた文字は
カバーをはずせば実は金色。
ドキリとする、しゃれたしかけです。
そしてページを繰れば、そこには中津さんのうたの世界が。
そこに長く立ち止まっていたい、そんな歌集です。
肩越しに投げるコインに水ひらき魚の目ひらき蔦が青いよ
指先が指先に触れそんなふうに蔓ばらは知る五月の空を
鉢合わす牛車もなければぼうぼうとこのはつなつを立ち尽くしつつ
かなしみの噴き出すような白躑躅 口は結んでいなければならぬ
ほほえみの色までわかるいまきみが電話のなかにつぐんでいても
この星に七十六億の人ありて落とせば鳴りぬ真昼間の鍵
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