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「かりん」5月号-師は深々と


「かりん」誌の5月号は毎年特集が組まれます。

今年の特集は「第一歌集という源流」。

坂井修一『ラピュリントスの日々』、米川千嘉子『夏空の櫂』など

「かりん」会員が1982年から1998年までに刊行した14冊を取り上げています。

私が初めて出した歌集は2005年の『サラン』。

次いで2012年に上梓したのが『百年の祭祀(チェサ)』ですが

それは2011年にかりん賞をいただいたことがきっかけでした。

2009年に入会した私にとって晴天の霹靂のようなできごとで

選考委員の坂井修一さんがお電話で受賞を知らせてくださった日のことは

今でもよくおぼえています。

授賞式は8月に東京の中野サンプラザで行われました。

上京じたいが八年ぶり、人生で四度目のことでしたし、

「かりん」の全国的な集まりに参加するのも初めて、

その上受賞のスピーチもするので、非常に緊張していました。

壇上で馬場あき子先生から賞状をいただいた時は

その緊張がマックスに達していました。

そのせいでしょうか。

賞状を拝受してお辞儀をした際

馬場先生よりも先に顔を上げてしまいました。

依然と深く頭を下げていらっしゃる馬場先生を目にした後、

あわててもう一度お辞儀をしたのか、それともハッとして固まってしまったのか。

覚えていません。

後日送られてきた写真でも先生のそのごようすがはっきり写っています。

これはもちろん私の時だけでなく、翌年、翌々年の授賞式でも

馬場先生は同じようになさっていました。

ご自身よりずっと年下の会員に授賞なさる際の

主宰の馬場先生のお着物姿での凛としたたたずまいを思い出すたび、

おのずと身がひきしまるのです。

「かりん」5月号には、その日のことを詠んだ次の歌が載っています。

     授けたる師は深々と頭(ず)を下げぬ賞状受けしわれよりもなお

                                キム・英子・ヨンジャ 


 
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