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有川知津子歌集『ボトルシップ』

  • momosaran
  • 2023年4月9日
  • 読了時間: 2分

,<2023年4月9日>


「コスモス」の有川知津子さんが第1歌集を上梓されました。


( 本阿弥書店 2023年3月31日 2,600円+税 ) 


小島ゆかりさんの帯文にあるように


有川さんの故郷は長崎県の五島です。


歌集名については、集中に次の1首があります。







航海図少しゆがみて広げらるボトルシップの船長室に


                   「ボトルシップ」より





 


これまで「水城」(「コスモス」福岡支部会報)などで


ときどき有川さんの短歌を拝読する機会があり


特に故郷の島をうたった作品にひかれました。


有川さんは昨年、「コスモス」の0先生賞を受賞されましたが


その連作「さざなみいんこ」も故郷の島をうたったもので


本歌集の最後に収録されています。


あとがきによると


2001年からの20年間の作品が収められています。


全体としてリフレインや対句が印象に残って


うたのリズムをたいせつになさっているように感じました。


私は五島へ行ったことはないけれども


島の潮の香りが満ちているように感じられる歌集です。


こちらの歌集を読んで


五島へ行ってみたくなる、


あるいは自分の故郷とそこに住む家族へ思いをはせる、


そうした気持ちになるかたが多いかもしれません。


好きなうたがたくさんあります。


その中から何首かをご紹介いたしますー。







ぎざぎざのむなびれ空に振り上げて星のめぐりを指揮するくぢら






かろやかに春野をゆけどいにしへは踏み絵に掛けし足かもしれず






雛鳥をかばふ翼のかたちしてミサイルかかへ飛ぶ飛行体






核の無い真珠ときけばかがよひのやさしかりけり淡水しんじゆ






ゆびさきはウソ発見器くびすぢにふれられたなら気をつけなさい






中庭の上がり框に魚籠に入るいとより置かれここはふるさと






つらつらと乗客の列ほそくなり浮き桟橋を降りてゆきたり






椅子の人なにをカウントしてゐたかわが通るときカチャリと鳴らす






いつまでも棺は見えてゐたといふ南氷洋のあおき浮力に






われを夢に見たるひとよりメールあり鳥なんだけどわかつたと言ふ






十三の夏に落とした箱めがねしばらくは章魚が住んだでせうね






船上の祖父のゆふべの慣ひにてうぶすなの土を踏みゐしといふ






今朝飲んだ松葉茶でせう指のさきひかりが差せばうすみどりせる






海面をすくひ跳びゆく貝殻よ母のアンダースロー久しぶり














 
 
 

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