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穂村弘歌集『水中翼船炎上中』

今日から5月。


今年も早や3分の1が過ぎましたね。


コロナ禍でのこの4か月、何をしたのだろうと考えると


なんだか下を見ちゃうので


それは考えずに


あと3分の2ある!って気持ちを切り替えて。


穂村弘さんの第4歌集『水中翼船炎上中』のお話をしましょう。


こちらは穂村さんの17年ぶりの歌集。


2018年に第23回若山牧水賞を受賞しました。


エッセイや絵本の出版なども数多く手がけられていますが


この受賞について、「現代短歌新聞」85号のインタビューで


「歌集で賞をいただいたのは初めてなので、うれしかったです」


と答えていらっしゃいます。



さて、この歌集は子ども時代が多く詠まれています。


このブログで「昭和の子」という記事を書いたばかりですが


穂村さんの描く子ども時代とはまさに昭和。


ウルトラセブンとか、なんだかばしばしと使う味の素とかが出てきます。


その他にも繰り返し出てくるモチーフがあります。


蟻、蟬、サランラップ、炬燵、警官など。


歌集は現在から始まって子ども時代に飛び


成長した後の母の死、


そして現在になるのですが


それらのモチーフは長い時間を貫いて詠まれています。


遠足とか、夏休みとか、子ども時代のうたに油断していると


不穏な空気に戸惑う。


読後、ざわざわしたものが残りますが


それは不快ということではなく


「何なんだ?これは何なんだ?」と考えずにはいられない。


一度読んでしまうと、もう胸から離れない。


そんな歌集だと思います。




 オール5の転校生がやってきて弁当がサンドイッチって噂



 雪のような微笑み充ちるちちははと炬燵の上でケーキを切れば



 おいしいわいいわわかるわすてきだわマーガリンを褒めるママたち



 パンツとは白ブリーフのことだった水道水をごくごく飲んだ



 解けてゆく飛行機雲よ新しい学級名簿に散らばった(呼)



 約束はしたけどたぶん守れない ジャングルジムに降るはるのゆき



 ゆめのなかの母は若くてわたくしは炬燵のなかの火星探検



 鮮やかなサンドイッチの断面に目を泳がせておにぎりを取る




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