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青山美津江歌集『一粒の麦』

  • momosaran
  • 28 分前
  • 読了時間: 2分

<2025年7月14日>


福岡市在住の青山美津江さんの歌集です。


( 海鳥社 2025年5月20日発行 1800円+税 )


桜川冴子さんが解説を書いておられます。


あとがきによると作者はこれまで


短歌結社や同人誌に所属されてはいなかったようですが


短歌にはずっと親しんでこられたようです。


(その後、現在まで短歌講座で学んでおられます)



歌集タイトルとなった「一粒の麦」に象徴されるように


クリスチャンとしてのうたが特徴といえます。


それだけでなく、ご夫君のこと、回想、海外旅行詠など


完成度の高い作品が並んでいます。


作者を存じ上げないのですが


80代に初めて上梓された歌集に心よりお喜びを申し上げたく


ここにご紹介いたします。






わたくしより愛しきものらみな奪られゆく試みたもうな我はヨブならず







夫と野に摘みし筆頭菜(つくし)の卵とじ野蒜(のびる)のぐるぐる春の夕餉は







宮参りの晴着の果てなるお手玉は母の針箱に一つ残れる







子を産まず家を継がざる我を打つ父母(ちちはは)の家をこぼつ槌音(つちおと)







あじさいはまろきぼんぼり五月闇の幽かなひかり集めて白し







ふくふくとふろふき大根たく夕べ雪を被きて夫帰り来る







迎えくれし荷馬車に木もれ陽の径を母の里までゆられゆられて







腰痛の我にかわりて殿様が「おちぶれたものよ」とゴミ出しにゆく







蝋梅の陽に透けて咲くこの冬も新品のブーツ納われしまま







二年ぶりに旧友と逢いてお互いに笑い合いつつ老を自慢す







亡き夫の使い慣れにし箸湯呑何気なくつかう人をにくめり







冬の陽に青き背広をあてし時懐かしはつかな夫の残り香







此(これ)の世でなすべき業(わざ)は終わりしか夫を送りて空(くう)の空(くう)なり





















 
 
 

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