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尾崎朗子歌集『タイガーリリー』


「かりん」でお世話になっている尾崎朗子さんの第二歌集です。

( ながらみ書房 2015年8月30日発行 )

    純情を暴走させることもなくタイガーリリーは胸に人恋ふ

という歌があります。

タイガーリリーとは。

あとがきに、『ピーターパン』に登場するインディアンの女の子の名前だと

記されています。

義に厚く元気なタイガーリリーが子どものころから好きだったそうです。

この歌集を読み終えた時に感じたのは

明るいけれどさびしい。

控えめだけど華もある。

ということでした。

そして、ふと馬場あき子先生の書かれた帯文を再読すると

それはこのように書き出されていました。

「尾崎朗子さんの作歌への情熱はすばらしいが、その炎の色は涼しい。」

馬場先生はひと言で表していらっしゃるのでした。

    四度めの転職をしてにこにこと感じのよいふうな人になりゆく

    さむがりのインコの籠にほのぼのとひよこ電球灯す秋の夜

    「ご家族はこれだけですか」と問ふ医師に「はい」としづかに頷く親子

    仕事だからお仕事だからとひと吠えし火の輪をくぐるサーカスの虎

    初七日のゆふぐれ滲み骨壺のなかにわたしの小鳥がをります

    反論はできないけれど会議前トイレに眉根を寄せる練習

    風を乗せ揺らぐボートを見てをりぬ一生(ひとよ)小池に終はる揺らぎを

    もう君との旅はなけれど近代詩のごとく書棚にある時刻表

尾崎さんの『タイガーリリー』は第16回現代短歌新人賞を受賞しました。


 
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