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野々山三枝歌集『ひとりを研ぎて』

  • momosaran
  • 2017年9月13日
  • 読了時間: 2分

今月1日、「かりん」9月号とともに郵便受けに入っていたのは

存じ上げないかたからの郵便物でした。

書籍のようですが、差出人のお名前に心当たりがありません。

開封すると、それは「かりん」の野々山三枝さんの遺歌集でした。

昨年9月に亡くなった野々山さんの第五歌集として

ご子息が出版され、ご恵送くださったものだったのです。

(短歌研究社 2017年9月10日発行)

歌集のタイトルは次のうたからとられています。

   ヴェネツィアンの耳輪つめたく濃むらさきひとりを研ぎてゆくほかになし

「かりん」誌では昨年5月号から「私の代表歌」という欄が設けられました。

会員が自らの代表歌一首をあげて短いエッセイを書くものです。

始まって間もない6月号に野々山さんが執筆されており

代表歌としてあげられたのがこの一首です。

ご子息が書かれた歌集あとがきによると

野々山さんは昨年3月から入院なさっていたそうですから

「私の代表歌」の原稿は入院直前かその病室で執筆なさったのかもしれません。

そのエッセイの結びにはこうあります。

――――ここから引用――――

 耳輪が揺れたある日、即詠に近い形で結実したのがこの短歌で、

幸運にも「かりん」全国大会で最高点を得て、馬場あき子先生の肉筆色紙を戴いた。

喜びを秘めて大切にしている。

――――引用ここまで――――

遺歌集のあとがきによれば、

野々山さんは入院中、「退院したら、今度こそ絶対に、第五歌集を出すんだ。」と

おっしゃっていたそうです。

その遺志を継いでご子息が出版された歌集の装幀は紫を基調としています。

改めてご冥福をお祈り申し上げます。

   身のほとりこがらし小僧鬼小僧めぐり来る夜の菊膾旨し

   「たくさんの家族でしたね」ちちははの蔵を見守る満月すがし

                   『ひとりを研ぎて』 「ちちははの蔵」より


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