未来の文学展
昨日の記事に書いたように、作家の多胡吉郎さんが尹東柱(ユン・ドンジュ)について講演なさいました。
その中で印象に残ったものの一つは、
尹東柱の自筆原稿や蔵書への書きこみなどから考察を深められていったお話でした。
昨日まで福岡市文学館で開催された「上野英信展 闇の声をきざむ」でも
会場を訪れて惹きつけられたものは英信さんの手書き原稿であり、
原稿用紙の升目にひとつひとつに正座しているように置かれた律儀な文字でした。
少し前にご紹介した白蓮さんの資料館「歌人白蓮想」(飯塚市)でも
写真や初版歌集など貴重なものがたくさん並んでいる中で
私がもっとも関心をもって観るのは白蓮さんの自筆の手紙です。
文学者に関する展覧会が開かれる際、
その目玉となるのは自筆の原稿や書簡、日記類であることは共通しているでしょう。
宮沢賢治展に足を運ぶ際、一番観たいものは
「アメニモマケズ」が書きとめられた手帳ではないでしょうか。
翻って、現在、多くの作家はパソコンを使って執筆しています。
つまり、原稿には推敲や書き足しの跡が残っていないだろうと思うのです。
すると、将来 そのかたがたの展覧会が開催されるときは何が目玉になるのだろう。
とってもとっても余計なお世話ではあるのですが
そうした漠然とした思いが何年か前から頭の片隅にあります。