黒木沙椰歌集『Manazashi677』
「かりん」の黒木沙椰さんの第一歌集が出版されました。
(角川書店 2018年9月7日発行 2,600円+税)
米川千嘉子さんが解説を書いていらっしゃいます。
短歌と米川さんの解説は縦書きですが
それ以外の部分は横書きになっているのが印象的です。
黒木さんは2016年に第18回かりん力作賞を受賞なさっています。
「かりん」前月号作品鑑賞文の執筆担当の一人になっていることもあって
これまで折々に「かりん」誌で黒木さんの作品は拝読していましたが
長崎県佐世保市のご出身ということを
こちらの歌集で初めて知りました。
私は学生時代の二年間を長崎市で過ごして
学校の寮(鳴滝寮)では佐世保出身の寮生も多くおりましたので
親近感をおぼえました。
では、『Manazashi677』より
八首をご紹介いたします。
真昼間ををんなばかりのイタリアン歯を剥く犬のラベルのビール
孫のことも自宅のことももう言はぬ姉とプリンのぷるぷる掬ふ
パンのため生きる一日を鳩たちは僅か(はつか)に華やぐ赤い足して
オムライス作る背中に姑は来て明るくまあるく長寿を詫びる
被爆少年なりし神父の語り継ぐ逃げて見捨てし三人のこと
執刀医慕ひてほのか華やぎし二年なりけり再発の友
自分のこと嫌ひなひとは向かないと入門書にあり歌人の資性は
浮浪児だつたこと夫には言へぬとおばあさん生き延びてきてまだそのあたり