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中島行矢歌集『母樹』

  • momosaran
  • 2018年10月12日
  • 読了時間: 2分

「ポトナム」の中島行矢さんの歌集が出版されました。

(本阿弥書店 2018年9月28日発行  2,700円+税)

タイトルは「ぼじゅ」と読みます。

次の一首から取られているようです。

 おびただしき桜の落ち葉ちり敷けるひとつひとつがその母樹を恋ふ

中島さんは福岡市在住。

第一歌集の『モーリタニアの蛸』で筑紫歌壇賞を受賞なさいました。

筑紫歌壇賞は60代以上の作者による第一歌集に授与するという

ユニークな賞です。

毎年、秋に太宰府市で授賞式がおこなわれます。

今回の『母樹』は

その『モーリタニアの蛸』に次ぐ第二歌集です。

金木犀と、

桜と、

猫。

それらを詠んだうたがところどころにあって

その他のうたをふんわり包みこんでいるような印象を受けました。

こちらの歌集から九首をご紹介いたします。

 咲きはじめやむにやまれず咲きすすむ桜はつひに咲きをはるまで

 犯人が現場にもどるそれに似た心裡にもどるときのふるさと

 ひすがらを雨のやむのを待ちながらつひに出かける雨ふるなかを

 沼の面へ雨はふり降る水の輪のたがひに打ち消しあひながら消ゆ

 入り口の脱ぎ捨てられし靴あまたいづれの順に死者となるべき

 そつぜんと知るべし羽化をとげながら蟬はおのれの残り時間を

 差し出せばわれも差し出すみどり児とからめるおゆび母御見ぬまを

 いつよりかつくつく法師ばかり棲む杜は火の手のあがるいきほひ

 だいだいの橙色にぶらさがり血すぢといふをわれはかなしむ


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