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「つぼみの花」


大正時代に発行された『新錦絵帖 處女の頃』は

表紙に 成園女史 白蓮女史 と入っています。

日本画家の島成園による四季折々の少女の姿に

柳原白蓮の短歌や詩が添えられています。

オールカラーの美しく愛らしい、

現代でいえばムックのようなつくりです。

奥付をみると

定価は三円五十銭となっています。

現代の貨幣価値になおすといくらぐらいなのでしょうか。

さらに関心をひかれるのは

発行日が大正十一年一月二十五日となっているところです。

白蓮さんが伊藤家を出奔して

新聞に絶縁状が掲載されたのが前年(大正十年)の十月。

そして、宮崎龍介との間の長男香織を出産し、

白蓮さんの兄、柳原義光伯爵が一連の騒動により貴族院議員を引責辞任したのが

同じ大正十一年の十月です。

白蓮さんがまさに嵐の渦の中にいた時期に刊行されたものなのです。

その中の十二の作品から

「つぼみの花」をご紹介いたします。

   美しききものを着て

   母上に見せにゆけば

   おおよいおべべ

 童女よ 汝が黒髪かたをすぎ

  矢の字の帯をかくせば

  おおよい黒髪よと

  のたまふは誰

童女よ とこしへに清くさびしき

  處女たるべし


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