齋藤芳生歌集『花の渦』
- momosaran
- 2020年2月9日
- 読了時間: 2分
「かりん」の齋藤芳生さんの第三歌集『花の渦』が出版されました。
(現代短歌社 2019年11月16日発行 2,700円+税)
齋藤芳生さんは福島県在住。
現在は学習塾の講師をなさっています。
毎月の「かりん」誌で拝読する、
塾の子どもたちと、子どもたちとの日々を詠んだ齋藤さんの作品が好きです。
このたびの歌集にも
それらのうたが多く収められています。
そして、福島の風土を詠んだ作品や
東日本大震災と原子力発電所事故に関わるうたも
さらに深みを増しているように感じます。
齋藤芳生さん、第三歌集ご上梓おめでとう存じます。
では、印象に残った作品から幾首かをご紹介いたします。
逃げるとは生きること深き泥の中おたまじゃくしはわらわら逃げる
高村智恵子の紙絵「菊」
「恋愛はコスパが悪い」とわれらは言い紙絵の赤き菊も切らざり
橋ごとにちがう川風ちがうみず文知摺橋に青草におう
冬タイヤの重さは冬の来る重さ交換を待ち居れば時雨るる
流れ来し花とめどなく橋脚の辺に渦巻くを長くながく見つ
9月21日(木)
とても久しぶりに、アブダビで働いていた頃の同僚からメール。
とても遠いけれども夢ではない日々を思えば金の砂こぼれたり
ひとつぶのどんぐり割れて靴底に決心のような音をたてたり
小雪舞う日の教室に来る子の手小さくて冷たくて、小さい
三つ編みの髪を烈しくふって泣く「いい子」と「都合のいい子」は違う
金の砂、はた銀の雨わたくしの三十代にながくふりいし
折り紙の雛(ひいな)を渡しくれたるは悲傷の春を知らぬ六歳
起き上がり小法師のように起き上がり子どもが走る夏休み前
数うるというさびしさよ咲く花を会えなくなってしまった人を
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