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父よ還れ


2021年9月13日。


今日は朝から小雨が降っています。


9月9日は長寿を願う重陽の節句ですが


その日は父の命日でもあります。


父が亡くなった日は夕方から雨になり


夜の間ずっと激しく降って雷も鳴りやまず


それが翌朝まで続きました。


私は斎場の控室では仮眠をとれそうになく


喪服も準備しなければならなかったので


夜中でしたがいったん帰宅することにしました。


ほとんど放心状態のようになっていたので


自分で運転はしないでタクシーでその大雨の中を帰りました。


午前3時ごろ


雷が鳴り響くのを聞きながらシャワーを浴びていると


突然 うたが湧いてきました。


次から次に湧いてきて


浴室から出た後に書き留めました。


そうしていてもうたが生まれるので


ペンを走らせるのが追いつかないほどでした。


そういうこと、たまにありますが


あの時が一番 一度にたくさん湧いてきたように思います。


それは父への挽歌でした。


ことばにならなかった思いが


うたとなってあふれた瞬間でした。


その挽歌は初めての歌集『サラン』(2005年)に収めました。





 父よ還れ雷鳴とどろく夜を越え玄海灘へ友待つ国へ



 白菜キムチ器の水に洗いては幼きわれに食ませたまいき



 医師いわく意識なき父涙する「人生の並木道」歌えば



 十一で渡りし国に逝きしとも父はかえらん 海渡る蝶



            キム・英子・ヨンジャ 『サラン』 



 




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