「かりん」8月号-呼び出し電話
<2023年8月3日>
今月号は7月31日に届きました。(早い!)
私の住まいは福岡県飯塚市です。
「かりん」の毎月の到着が首都圏より遅くなるのは当然として、
さらに福岡市内よりも数日遅れるのが常です。
なので、今回は(嬉しい)予想外の早さでしたー(=^∸^=)
巻頭の馬場あき子先生ご執筆の「さくやこの花」、
今月は次の1首が載っています。
価値なきは安らけきかなと荘子言へり 地獄をすみかと言ひし唯円
馬場あき子 『混沌の鬱』(2016年)
「さくやこの花」は歌林の会(かりん)のウェブサイトで第1回からご覧になれます。
また、今月号の評論は江川美恵子さんが
「抒情の奥行き~時間を孕む馬場あき子の歌」と題して書かれています。
さて、私のうたは「夜鳴る」と題した7首が掲載されています。
今はもう昔のこととなった呼び出し電話のことを詠っています。
そういえば少し前、穂村弘さんが朝日新聞へ寄稿された文章で
呼び出し電話のことを書いておられました。
ーーーーーここから引用ーーーーーー
小学生の頃、私の家には電話がなかった。
当時は呼び出しという習慣があって、急用の時は隣人が
「お電話ですよ」と呼びにきてくれた。
今となっては信じがたい話である。
そんなある日、我が家に黒電話がやってきた。
誇らしそうな父、嬉しそうな母、はしゃぎ回る私。
初めてベルが鳴った時のときめきをよく覚えている。
50年後の今では、無表情にスマホを眺めているけれど。
ーーーーーー引用ここまでーーーーーーーー
私の「夜鳴る」7首は穂村さんとは反対で
呼び出しに行くほうの立場です。
幾首かご紹介するとーーー
農協の有線電話でつながっている村人は同じ姓もち
炭坑の閉山の次の大事件わがやに黒電話がやってきた
遠距離の夜間割引あるからに呼び出し電話のベルは夜鳴る
寒風の夜に出てゆく こんばんは息子さんから電話きてます
当時、黒電話をもったのが私の住む集落ではうちだけで
そのため毎晩のように呼び出しを頼む電話がかかってきました。
穂村さんの文章は今年の7月6日付の朝日新盤「言葉季評」の掉尾。
私がこの「夜鳴る」の歌稿を投函したのは6月4日で、
それが今月号に掲載されています。
だから、まったくの偶然なのですが
呼び出し電話のことは今は話題になることってほとんどないと思うし、
私自身ひさしぶりに思い出してうたになったので
歌稿を投函してからひと月ほどたってはいましたが
穂村さんが呼び出し電話のことを書いておられるのを読んで
少し驚きました。
しかも、一方は散文ですけれど
「わがやにくろでんわがやってきた」はぴったり同じです。
その上、穂村さんのお父さまは炭鉱で働いておられたけれど
「石炭産業が斜陽になったことで土木建築業に転じた」
とあります。
私が歌稿を投函してから穂村さんの文章が新聞に載るまで
1か月の間隔があるので
私がしばしば述べる「短歌の偶然」というには時間が空いていると思いますが
それは別にしても
同世代なんだなあとつくづく感じたことでした(=^∸^=)
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