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「ほんたうに俺でよかつたのか」

<2022年2月26日>


きのうNHK・BS1で「ほんたうに俺でよかつたのか」というドキュメンタリーが放送されました。


歌人の河野裕子さんが2010年に64歳で亡くなったあと、


実家の押し入れから結婚前の6年間の日記が出てきたそうです。


夫で同じく歌人の永田和宏さんは


その日記をもとに雑誌「波」に連載を始めます。


「赤裸々な青春の軌跡。


なぜここまで過去をさらけだすのだろう。


永田さんの心に何が起きているのだろう」


番組からの問いに永田和宏さんはこう答えます。


「日記を読んでいくうちにこの連載始めようと思ったのは


本当にすごく恥ずかしいことで


だんだん自信がなくなってきたというか、


『ほんとうに俺でよかったのか』という思いがしてきた。


ただ、こんなふうに一途に思いながら


青春という時間を過ごしてきた女性がいたんだということだけは


知っておいてほしいなっていう


そんな気がしますよね」


永田さんは世界的な細胞生物学者の権威であるという。


そして歌壇を代表する歌人の一人である。


理系も文系もきわめたすごいかただ。


そのかたの生涯の伴侶であり


亡くなって10年以上たった今も


これほどまでに愛されているのが河野裕子さんなのだ。


そのことに圧倒される思いがした。



番組で紹介されたお二人の相聞歌から幾首か記します。


河野さんのうたは第1歌集に収録された若き日のもの。


永田さんのうたは河野さんが亡くなってからのものです。








  夕闇の桜花の記憶と重なりてはじめて聴きし日の君が血のおと


                                   河野裕子



  陽にすかし葉脈くらきを見つめをり二人のひとを愛してしまへり






  

 ああ、それは、人を遠くにやるしぐさ彼女には手をあはせないで欲しい 


                                  永田和宏  




 訊くことはつひになかつたほんたうに俺でよかつたのかと訊けなかつたのだ 






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