『牧水・啄木・喜志子』(伊藤一彦・著)
<2024年3月5日> 【貴志子の短歌をあと2首3/6追記】
「かりん」2月号の「かりんの本棚」(歌書の書評欄)に
若山牧水研究者としても知られる歌人・伊藤一彦さんの
最新評論集について執筆しました。
副題は「近代の青春を読む」です。
( ながらみ書房 2023年9月17日発行 2,600円+税 )
第1部では石川啄木・与謝野晶子・佐佐木信綱といった
同時代の文学者たちとの交流からその影響や比較を論じてあります。
牧水と石川啄木の生い立ちに共通点が多いことや
ふたりがどのようにして出会ったかなど興味深いところですが
私が最も印象深かったのは
牧水の妻、喜志子の作品を鑑賞する第2部です。
これまで牧水の伴侶として名前を知っているだけで
歌人としての貴志子に注目していなかった私は
著者の鑑賞とともに貴志子のうたにふれて
牧水夫人というだけのカテゴリーから
貴志子短歌を解き放つべきだという著者の主張に
深く納得させられました。
特に日中戦争の時代における貴志子について
「この時期、すでに大政翼賛的な短歌が多く詠まれていたなかで、
貴志子は篠弘が言うように人間ひとりひとりに深く思いを及ぼす
『反骨の歌人』だった。」
とあるところを心ふるえるような思いで読みました。。
「かりん「2月号では字数の関係で
貴志子のうたを紹介できなかったので
こちらでは幾首か記します。
七月七日、日支事変勃発す
ましぐらに轟き過ぐる貨車のうちに馬と兵とが顔並べゐし
陰暦九月十五日夜
ますら夫のはやる心に照り澄みて痛くぞあらむこの夜半の月
鋭心(とごころ)を眼にあつめ寝もやらぬ兵の陣地に霜も結ばむ
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