丸地卓也歌集『フイルム』
<2024年4月20日>
「かりん」の丸地卓也さんの第1歌集が出版されました。
( 角川文化振興財団 2024年3月26日 2,200円+税 )
栞文を坂井修一さん・北山あさひさん・寺井龍哉さんが書いておられます。
連作単位で読んできたかたの作品が歌集にまとめられることで
特性がいっそう濃く感じられて
その美質がどーんとこちらに迫ってくることがあります。
そのような時は胸の高鳴りを覚えます。
丸地さんの『フイルム』もどーんと迫ってきました。
丸地さん、第1歌集のご上梓おめでとう存じます。
見つめれば漆器は生の暗さもち漆器はジャパンと呼ばれていたか
さぼりつつ甘い紅茶を飲んでいる生活を詩に近づけるのだ
母に似た祖母が施設にはいる日よ菜の花ゆれてわれ少し老ゆ
心電図の音しかしない夜だねと屋上で煙草吸う看護師は
蜘蛛の巣に紋白蝶が静止して花びらのように食われてしまう
名を抜かれ症例になる患者おり故郷の海はわれしか知らず
ペイズリー柄のネクタイ民俗の深さで馬場家のタンスより出づ
鞄、ペン黒きもの身にまといおり男らしさをまだ信じいる
川は持ち帰るわけにはいかぬからとりわけ重たき真桑瓜買う
暗号機エニグマのごとき端末を市役所職員皆叩きおり
分電盤やけに詳しき結核の患者が職を話すまで待つ
弟の挽歌を毎年つくるべしわが黒き森の枯れないように
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