井ヶ田弘美歌集『白い一角獣』
<2022年12月15日>
「かりん」の井ヶ田弘美さんの第2歌集が出版されました。
(角川書店 2022年11月11日 2,600円+税)
帯文は馬場あき子先生が書いておられます。
私が「かりん」に入会してまもない頃、
東京での「かりん」の全国的な集まりにでかけても
知り合いはほとんどいませんし気後れしていました。
そんな私にニコニコと話しかけてくださった井ヶ田さんの
穏やかで明るい笑顔に助けられました。
井ヶ田さん現在「かりん」の選者をつとめておられます。
歌集のタイトルは次の1首からとられたかと存じます。
見あげれば真白き雲の一角獣どこにでもいていないとリルケは
「岩田先生」と題された一連もあり、
2017年に亡くなった岩田正先生への挽歌が収められています。
井ヶ田さん、第2歌集ご上梓おめでとう存じます。
特に印象に残ったうたをご紹介いたします。
電車に座し乙女の臍の目の前にあれば形の優劣思う
P43
馬の耳うしろに倒せる不機嫌をすばやくなおす角砂糖(さとう)に喃語
P54
蝦蟇口を持つは少なし胸元でぱちりと閉ざせば母の音する
P73
忙しさは暮らし転がすはずみなりお節料理に追わるる歳晩
P79
コーヒーの盆持ちながらわが足は意外と器用にスリッパ起こす
P128
芹・なずな手元すずしく七草の摘まれることなき原発圏内
P141
なんと苦しい癖であろうか歌詠むは「ひとつの癖」といいしは慈円
P217
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