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雰囲気

<2023年6月18日>


穂村弘さんの『野良猫を尊敬した日』に収録された「云えない」は


病院での採血をめぐるエッセイです。



****ここより引用****



人間の雰囲気や佇まいは、情報としての精度が高いらしく、


殆どの場合、結果は予想通りになる。


無表情なベテランの採血は、


針を刺したのもわからないような早業で、はい、一丁あがり、だ。



****引用ここまで****



初々しい若いナースから採血されることになり、


不安に思っていると案の定二度も失敗されて痛い思いをした。


その点、ベテランっぽいナースだと


採血される前から安心できる、という一節です。


コロナ禍前(2017年)に刊行された書物ですが


この一節を読んで思ったのは


コロナ禍により普及したオンラインのことです。


「人間の雰囲気や佇まいは、情報としての精度が高い」。


コロナ禍で人とまったく会えなくなった状態で


オンラインでの集まりはほんとうに助けになりました。


オンラインならではの良さもたくさんあります。


私もそのメリットを受けている一人です。


一方で、画面の向こうのかたが


(特に初対面だった場合)


どのような雰囲気のかたであるかはわかりにくい。


佇まいとなるとなおさらです。


その他にも


全体の装いからそのかたのセンスを感じたり


ペンケースなどの持ち物におちゃめな面が垣間見えたり、


オーデコロンの香りを感じたり。


そうしたことは実際に合わなければ得られない「情報」です。


別の話で、


相手と会話して良いコミュニケーションがとれていると


脳波の揺らぎが同期(シンクロ)するけれど


リモートの会話ではこの同期が起きないと


脳科学者の川島隆太さんが言っておられます。


こちらと前述の話は別のことなのでしょうが


どこかでつながっているような気がします。


感染予防の上では


やむを得ずリモートでおこなうもろもろがある。


でも、そこにはメリットだけでなく


リモートゆえにとりこぼしてしまうこともあることを


むずかしい理論は知らなくても


この3年の経験で気づいた人は多いのではないでしょうか。


そのことをこれからも忘れずに


対面とリモートのバランスを取っていければと思います。

















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