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古谷円歌集『ひきあけを渡る』

<2024年5月29日>


「かりん」の古谷円さんの第3歌集が出版されました。


( 本阿弥書店 2024年4月27日発行 2,700円+税 )


歌集タイトルについては集中に次の1首があります。


   





忘れたる夢とりもどしひきあけを渡る一羽よ遠くなりゆく







お父さまとの永訣を詠まれた連作「ひきあけを渡る」の11首目です。



たいせつなかたがたとのお別れやお茶、学校の生徒たちやコロナ禍など


さまざまなテーマがうたわれていて


それぞれに心惹かれるのですが


見落としてしまいそうなささやかな、なにげないことや自然に


心を寄せたうたに特に惹かれました。







声小さく椅子には浅く座りたり定時制高校の新入生ら







老木の花は幹よりふきいでて曾孫のようなうらわかさあり







三日月がこの世の出口に見える夜こよなく甘いチョコレート食む







なんとなくごめん双葉のバオバブはベランダの小さき鉢に生まれる







ゆうやけの校舎の裏に生徒呼びわずかな芋焼く先生のあり







結婚してよかったか訊く女生徒に二回うなずき源氏の続き







戦談義やめて病人に戻る母孫が兵士でいいかと聞かれ











 

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