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吉川宏志歌集『叡電のほとり』

<2024年10月24日>


短歌結社「塔」主宰の吉川宏志さんの第10歌集です。


正式なタイトルは『叡電のほとり・短歌日記2023』。


( ふらんす堂 2024年7月29日発行 2,200円+税 )


ふらんす堂のウェブサイトに昨年1年間連載されたものが書籍化されました。


短歌日記なので毎日の1首に短い文章が並んでいます。


そのミニエッセイのような散文と1首のつかず離れず具合が絶妙で


連載当時、毎日楽しみに拝読していました。


本になったらまた違った味わいが出るのだろうなと思っていましたら、


果たしてそのとおりというか、パワーアップしていました!


装幀もいい。


まず、大きさは両手に収まるほどのかわいさで


この深く落ち着いていながら暗くないグリーンは


実際の叡電の車体の色に寄せておられるようです。


(ちなみに叡電とは京都を走っている叡山電車のことで


京都在住の作者がいつも利用されているとのこと)。


表紙には愛嬌のあるうさぎのイラストがあしらわれていて


このうさぎとタイトルが銀色の箔押しになってます。


もうこの装幀だけでもいとおしい感じになり、


机の上に積んでいる本の一番上に乗せて


いつも目に入る(愛でられる)ようにしています。


私は歌集や資料とする書籍を机やテーブルに置くとき、


裏表紙を上側にして置きます。


表紙は情報が多くて、


それが何冊分も目に入ると頭が(早く読まねばと焦って?)


疲れるように感じるからなのです。


でも、この『叡電のほとり』だけは別で、


いつもその表紙を愛でています(=^∸^=)


素敵なのは装幀だけではないことは言うまでもありません。


1ページに日付と1首、そして短い文章が載っています。


最初のページ、2023年の1月1日から読んでいくのもいいし、


たとえば読んでいるその日と同じ日付のページを読んだり、


自分の誕生日の日付のページを読んでみたり。


ちなみに10月8日のページには次の1首があります。







急に肌寒くなりたり肌という淋しきものに黒きシャツ着る









この1首を読んで、


今年の秋はこういう天候だけれど去年はこうだったのだなと


思い返したりすることもあります。


そして、今日と同じ日付、10月24日のページには


この1首が載っています。









束なして朝の湯落つるかたわらに酒の残れる身を浮かべおり








並べられた散文を読むと


少し二日酔いの状態でホテルの温泉浴場に行ったとわかります。


そして、その窓から宍道湖が見えると。


この散文がまた良いのです。


京都にお住まいの作者の日常や


歌人として忙しくお仕事をなさるようすが伝わってきて、


親しみを感じます。


ところで、私の『叡電のほとり』の読み方は


ときどきあちらこちらのページを散歩しながら


基本的には最初から順を追ってページを進むというもの。


基本的にはまだ最後のページまで行っていません。


読み終わるのがもったないような感じなので、


とうぶんこのスタイルであちらこちらのページに飛びつつ


3~4ページずつ読み進めていきます(=^∸^=)










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