平山繁美歌集『白夜に生きる』
<2022年10月12日>
最近「かりん」のかたの歌集や歌書の出版が相次いでいます。
『白夜に生きる』は平山繫美さんの第2歌集です。
(本阿弥書店 2022年8月23日 2,700円+税)
人よりも看護師として期待されもうずっとずっと白夜に生きる
歌集のタイトルはこの一首からとられています。
平山さんは看護師であり、
コロナ禍の医療の場が
過酷とか厳しいとかそうした言葉を越える状況であることが
読む者に迫ってきます。
息子さんも同じく看護師をなさっていて
コロナ隔離病棟勤務になった息子さんへの
母としての気持ち、同じ看護師としての気持ち、
その揺れも詠まれています。
章立ては
「令和二年」「令和三年」「令和四年」となっており
まさにコロナ禍の今を詠まれた歌集です。
生きるのが大変だった アルバムはひらけどひらけど大運動会
洟をかむことも補水も許されず防護服下はおむつをつけて
御家族でなくて私か この世から消えゆく命を見守っている
外敵のなき夕暮れにヤドカリは殻を脱ぎ捨て行水をする
暮れやすき厨にひとり露草のかんむりみたいな火を点したり
カチカチとしろがねの匙みどりごのちいさな前歯がよろこんでいる
防護衣に飛沫浴びつつ一時間咳の合間に粥を運べり
御家族は頭では理解されている声帯のなきウサギのごとし
この世でしか一緒にいられぬ人といる握り寿司のたまご頬張りながら
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