有働克子歌集『氷河色のアイス』
<2023年11月14日>
「かりん」の有働克子さんの第1歌集が出版されました。
( 短歌研究社 2023年9月21日発行 2,500円+税 )
解説は米川千嘉子さんが執筆なさっています。
印象的な歌集タイトルは次の1首からとられているようです。
子供のころ恐竜ゐたのと聴かれをり氷河色のアイスなめつつ
小さな子どもの質問に意表をつかれながらも
ほのぼのとしたユーモアが漂います。
歌集前半ではこのうたを含めて下記の作品にひかれました。
止まれ今口づけせむとする雲の横顔ふたつ冬うららなり
手を伸ばし抱いてとせがむ子のやうに毎日つるを伸ばしくる豆
空いてゐる膝さへあれば座りくる幼子は愛を底なしに吸ふ
剥がすとき必ず破れる春キャベツ閉ざしたこころ今は開かずに
歌集後半では、「スウェーデン滞在記」と題された連作(2作)が
特に印象に残りました。
ご結婚まもなく
イェテボリという街に2年間お暮らしになったそうです。
実際に住んでの生活が生き生きと詠まれていて
旅行詠とはまた違った良さがあります。
冬空は数滴のミルク垂らしたるグラスの水のひ弱なにごり
マンションの芝生に水撒き一冬のスケートリンクに親子が遊ぶ
パーティに和服着たれば必ずや背中の亀はなにかと問はれ
夏祭り民族衣装にしつとりとミモザの花の雨ふるイェテボリ
白夜には毎週パーティもちまはり議論とダンスで徹夜いとはず
黒きシェードが白夜を隠す 深海の闇で眠るは極東のわれら
歌集後半から引用の3首目。
「背中の亀」とは和服の帯のことなんですね。
そうたずねるほど和服姿を目にすることがない、
つまり在住の日本人が少なかったということなのでしょう。
白夜を思いきり楽しむようすや
でも身体はなかなかそれになじまないようすなども
作品からよく伝わってきます。
有働克子さん、初めての歌集のご上梓、おめでとう存じます。
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