木村寛子歌集『木蓮坂』
<2023年10月8日>
「かりん」の木村寛子さんが第1歌集を上梓されました。
( 本阿弥書店 2023年9月1日発行 2,700円+税 )
梅内美華子さんが解説を執筆され、
帯文は馬場あき子先生が書いておられます。
そちらをご紹介いたしますね。
「夫と三人の娘、五人家族の家を切り盛りしつつ、
まっとうに、まっさらな日日を送り迎える安らかさがここにはある。
豊かな時間の流れの中に、変化の波紋を刻むように、
その日常をうたい重ねることが、人生の軌跡であるとともに
固有のドラマでもあることを発見させてくれるだろう。
馬場あき子 」
木村さん、第1歌集ご上梓おめでとう存じます✨
印象に残った作品の中から幾首か記します。
春キャベツやさしくはがす初めてのわが子の襁褓かへし手つきに
わづか五枚祖母の写真の残りたり古びて薄き母のアルバム
手のひらをさし出すかたちに葉のしげる木蓮坂に風吹く五月
こごと言はぬ父でありしが一度だけ窘(たしな)められたりジーパン姿
行きつけのパン屋に好みのカルカサシュ少し小ぶりになるをあがなふ
くれなゐのうす絹ふはりと絞るかに日暮れにほろほろ酔芙蓉落つ
神社へのながき石段しばし見上げ深く礼(ゐや)せり杖の老女は
うたを詠む母でありしよ読みとれぬ晩年のメモあまたを残す
実家の庭に深く大きな防空壕残りて祖父は椎茸そだてき
大叔父の出征写真出できたり見送るやからに笑顔の多し
啼けばなくほどにきらはれ啼くほかのなき画眉鳥の庭にきて啼く
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