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本屋敏郎歌集『神話街道』

<2023年4月18日>


「かりん」の翻訳さんの第一歌集が出版されました。


(2023年3月1日 短歌研究社 2,500円+税)


解説は坂井修一さんが書いておられます。


本屋さんのふるさとは鹿児島。


宮崎県延岡市で15年を過ごされたそうです。


歌集は次のようにまとまられています。




「日向街道」・・・延岡市はじめ宮崎県内を題材とした作品


「神話街道」・・・日向神話に関わる各所を詠んだ作品


「肥後・豊後街道」・・・熊本・大分に関わる作品


「薩摩街道」・・・ふるさとに関する作品




第1歌集でありつつ全体として端正な歌風で


南九州の自然の中で神話を体感するような作品が印象的です。


また、作者がお仕事のため延岡市へ転居されたことにより


鹿児島でひとり暮らしとなったお母さまのうたが折々にあります。


そのうたうたから立ち上がるたたずまいに心ひかれました。


では、『神話街道』から何首かご紹介いたします。






朝光の届き始めし庭石の温もり抱きて蜥蜴眠れり






流されてばかりのように揺れながら行くべき方へ飛びゆける蝶






不幸ふたつ幸せひとつ今日聞きぬ今日は良き日と思いて眠る






大一番取り終えしごとゆったりと角力田橋を猫帰り来る






右足は痛くないとう母の便り左は痛いと読み換えたたむ







戦いて逃れ日向の地に果てし百済の王の息のごと風






草原を白馬群れなし行くごとく白波の湧く秋の海岸






余所者は来るなとニニギ威すごと槵觸峯に蟬鳴きしきる






眠りつつ運ばれて行く生もある夜汽車の窓の明かり閉ざして






ふるさとは火を噴く山のあるところ元気を出せと叱られに来る






風吹けば山より降れる枯れ枝を集めて沸かす母の湯に浸る






故郷の母を訪ねて百日草と忠告ひとつ貰いて帰る







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