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桜井園子歌集『水中鳥居』

<2022年4月1日>


「かりん」の桜井園子さんの2冊目の歌集が上梓されました。


(角川書店 2022年2月25日発行 2,600円+税)


水面の青を基調とした中に小さな赤い鳥居。


印象的な装幀です。


水中鳥居とは箱根の九頭龍神社のものだそうです。





 学校に行くは筒袖よそゆきは元禄袖なる綿入れ半纏



 蕗、蝗出入りの業者に買い取られ教材、図書の足しになりたる



 福島をお守りください桟橋に揺られ手合わす水中鳥居



 おおどかに微笑み背筋を伸ばしゆくこころの傷口ひらきそうな日



 蕗の薹、楤の芽春のことぶれのわが身に入りてしゃんとするなり





1首目。うちの中だけでなく学校に行く時もよそゆきの時も綿入れ半纏を着ていた、


それだけ寒さが厳しい土地だとわかります。


「よそゆきの元禄袖」がいいですね。


1首目、この一連には蕗とりは学校行事であって生徒ひとりに3貫目のノルマがあり


そのノルマを達成するのに両親を頼ったという作品もあります。


3首目。作者は福島県出身。


「揺られ」は桟橋に立っているからなのですが


うたの<われ>の心の揺れにも感じます。


4首目。私が「かりん」に入会して日の浅い頃は


上京して「かりん」の集まりに出てもほとんど知った人がいないので


不安だったり落ち着かなかったり、手持ちぶさたになったりしました。


そんな時、桜井さんはやわらかい笑顔で話しかけてくださいました。


2012年に私の第2歌集『百年の祭祀(チェサ)』の批評会を東京でおこなった折も


会場に足を運んでくださいました。


その時のやさしい笑顔を思い出します。


5首目、春の訪れが遅い土地に生まれ育ったからこそ


故郷を離れてもその味のうれしさを体はしっかり覚えていて


それを味わうことでまさに春を人一倍実感するのでしょうね。




桜井さん、第2歌集『水中鳥居』のご上梓、おめでとう存じます。









 

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