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歌集『無限花序』(馬場あき子全歌集)

<2022年3月5日>


馬場あき子先生の第3歌集『無限花序』(1969年)を


『馬場あき子全歌集』(角川書店 2021年)で拝読しました。


同全歌集の『無限花序』解題で坂井修一さんは


「作品世界を文化史・思想史的な世界に広げ、


馬場あき子の歌人としての立ち位置を明らかにした記念すべき第三歌集」


と書いておられます。


『寂しさが歌の源だから』(馬場あき子・著 / 聞き手・穂村弘  角川書店)では


穂村弘さんが『無限花序』について


「これはすばらしい歌集で、


 代表歌もこのあたりからざくざくと出始めます。


 第二歌集までは、率直に言って普通の歌人というか、


 馬場あき子になるかどうか、わからない感じだけれど、


 この十年の空白の後の『式子内親王』『無限花序』、二年後の『鬼の研究』で、


 この人しかいないという存在に一気になるわけです。」 (p110)


と述べているのも印象深いです。 


馬場先生が2011年から「かりん」誌に連載されている「さくやこの花」


(ご自身のうたを毎回1首取り上げて書かれている文章)でも


第1歌集の『早笛』については第1回~第2回で、


第2歌集の地下にともる灯』所収の作品については第3回~第6回で取り上げられていますが


第3歌集の『無限花序』所収のうたについては


第7回~第14回の合計8回にわたって書かれているのも


そのことと関わりがあるでしょうか。




 ・三輪山が夕陽に死なん夏の日を額田は生ききうち消しがたく


       (「かりん」2011年7月号 ・ 「さくやこの花」 第7回) 




 ・水底に春の気泡は生まるるにわれは耳なき挫折の女面


       (「かりん」2011年8月号 ・ 「さくやこの花」 第8回)




・足裏を舞によごしし足袋ひとつ包みてわれのまぼろしも消す


      (「かりん」2011年9月号 ・ 「さくやこの花」 第9回)




・草むらに毒だみは白き火をかかげ面箱に眠らざるわれと橋姫


       (「かりん」2011年10月号 ・ 「さくやこの花」 第10回)





・よもぎ野にみちいる夏に兄の屍に咲くあればもしわが身ならずや


       (「かりん」2011年11月号 ・ 「さくやこの花」 第11回)





・むくろじの森の冷たさすきとおり魚ともならんひとりを待ちて


       (「かりん」2011年12月号 ・ 「さくやこの花」 第12回)





・変節のおそれきざせる闇にして小面ひとつしずかに笑う


       (「かりん」2012年1月号 ・ 「さくやこの花」 第13回)





・こころいま走らんばかり鋭きに刀剣展は街にしずもる


       (「かりん」2012年2月号 ・ 「さくやこの花」 第14回)





 「さくやこの花」は歌林の会(かりん)のホームページに第1回からアップされています。


どなたでもご鸞になることができます。












 

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