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歌集『飛花抄』(馬場あき子全歌集)

<2022年5月11日>


『飛花抄』(新星書房 1972年)は馬場先生の第4歌集です。



こちらの歌集について


歌人の佐佐木幸綱さんが次のように書いておられます。



”『飛花抄』という歌集を短歌史的に見るならば、


いま言ったように前衛短歌運動が一段落して、


そこで活動した個々が、


その成果を各自の現場に持ち帰って


独自の世界を掘りはじめた時期の歌集ということになる。


馬場あき子に即していえば、


前衛短歌運動期をトップ・グループの中ほど、


ないしは後方につけていたのが、


この時点で一気に追い上げ、先頭に立ったのである。”


            (角川「短歌」 1994年10月号)




馬場先生が2011年から「かりん」誌に連載されている「さくやこの花」


(ご自身のうたを毎回1首取り上げて書かれている文章)では


第15回から第23回までの9回にわたって


『飛花抄』所収の作品を取り上げられています。





 ・しずめかねし瞋(いか)りを祀る齋庭(ゆにわ)あらばゆきて撫でんか獅子のたてがみ


       (「かりん」2012年3月号 ・ 「さくやこの花」 第15回) 




 ・われのおにおとろえはててかなしけれおんなとなりていとをつむげり


       (同 2012年4月号 ・ 「さくやこの花」 第16回)




・われにのこる亡母の血族ひとりいて風死にし夜を発(た)ちくるという


      (同 2012年5月号 ・ 「さくやこの花」 第17回)




・身をもめどとどかぬ願いあるなればしみじみと桜咲き揃いゆけ


       (同 2011年6月号 ・ 「さくやこの花」 第18回)





・鳥脳(とりなずき)裂く一丁に砥ぎいだす夏空ぞしんかんたるしじま


       (同 2012年7月号 ・ 「さくやこの花」 第19回)





・母をしらねば母とならざりし日向にて顔なき者とほほえみかわす


       (同 2012年8月号 ・ 「さくやこの花」 第20回)





・いつの科挙に落ちたる夢ぞ手に繰ればどこも文字なき製本見本


       (「かりん」2012年9月号 ・ 「さくやこの花」 第21回)





・苦しみを忘れずは人は生きざらん暁漉(あかつきず)きの薄氷(うすらひ)の紙


       (同 2012年10月号 ・ 「さくやこの花」 第22回)





・母の齢(よわい)はるかに越えて結(ゆ)う髪や流離に向かう朝のごときか


       (同 2012年11月号 ・ 「さくやこの花」 第23回)





 「さくやこの花」は歌林の会(かりん)のホームページに第1回からアップされています。


どなたでもご鸞になることができます。












 

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