江森節子歌集『ゆうすげ色の月』
<2024年9月19日>
福岡市在住の江森節子さんの歌集が出版されました。
( 書肆侃侃房 2024年9月12日 2,700円+税 )
「かりん」の桜川冴子さんが解説を書いておられます。
歌集のタイトルは次の1首からとられました。
ゆうすげは君と見し花その色に月が浮かびて地球を悲しむ
心ひかれた作品の中から幾首かをご紹介します。
試験管振りつつ眺むる中庭に銀杏の実は零れこぼれて
ふるさとの野の風草はむらさきを帯びて広がる秋の匂いに
微かなる風にも揺れる天秤にこころして量る微量の劇薬
気づかれぬように目蓋をそっと開け花の蕾は春をうかがう
足裏(あなうら)を浸して渚に佇めば子どもらのように波の寄りくる
愛された記憶は満ちて遠白く海のはたてに灯台浮かぶ
子ども食堂子らの目輝くクリスマス「こんなにたくさんもらっていいの」
老いの身に沁みる寒さよ献血を呼びかけて立つ雪の天神
ヴィオラ弾く人に請われてわが歌う「さくらさくら」よモンマルトルに
レンギョウの咲ける狭庭に水蒔けば小(ち)さき虹立ちて春の揺らめく
「酢味噌和えにどうぞ」と友にもらいたる菜の花五本小瓶に挿せり
夕闇はさびしき庭に降りてきて遂に野ぼたんの紫を呑む
おびただしく赤き椿の落ちる道 過剰な愛の痛みのように
我をただ一人の人といつくしむ人のなけれど夕星(ゆうずつ)の空
1944年生まれの江森さんは
40年以上にわたって薬剤師のお仕事をなさり
6年前に短歌を始められたそうです。
江森さんと短歌の出会い、そして初めての歌集のご上梓を
心よりお喜びいたします。
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