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浦河奈々歌集『硝子のあひる』

<2024年6月27日>


「かりん」の浦河奈々さんの新しい歌集です。


( 短歌研究社 2024年6月12日発行 2,200円+税 )


浦河さんは2007年に短歌研究賞の次席となられ、


20009年にはかりん賞を受賞。


その年に第1歌集『マトリョーショカ』を上梓されました。


翌年には同歌集で第10回現代短歌新人賞を受賞なさっています。


2009年1月に「かりん」に入会した私にとって


初めてのかりん賞発表号で目にしたのが浦河さんのお名前。


以来、「かりん」誌で作品を拝読しています。


2013年には第2歌集『サフランと釣鐘』を出版されました。


同じ年、私の第2歌集『百年の祭祀(チェサ)』の批評会


(会場は、今はなつかしき東京・中野サンプラザ)では


栗木京子さん・大野道夫さん・梅内美香子さん・中津昌子さんとともに


浦河さんがパネラーをつとめてくださいました。


今回の『硝子のあひる』は11年ぶりの第3歌集です。


拝読しながら、付箋がたくさんつきました。


その中からご紹介しますね。








母は仏になりて微笑みなどすまい呆然と風に流されをらむ







おのれのみ抱きて首まで浸かる夜の湯をセメントのごとくおもへる







銜へきれずに落としたベリーをあきらめず舞ひ降りてきて齧る雀や







「山にのぼる」と誰にもいはず埋もれたるひとの孤独や 火山灰の下







白鳥の長きくび水にもぐるとき顕れ出でよニケの背中は







もうずつと生まれる順を待つてゐる真白きまひるの壁にもたれて







感情がおのれを壊すことありてしづかに上澄みのわれに変はりぬ







あさがほの秋の漏斗に白光の溜りくるめく天国の門







飛ぶやうに売れる肉まん、冬のひとはまるくて柔くて温きもの好き







つぎつぎと小さき錠前開(あ)くやうに咲きゆくスノードロップの春







たましひの贄(にへ)なるからだ引き摺つてわたしはドクターショッピングする







空の青と溶け合ふやうなネモフィラの丘は未来の無人なる星







踊り場はどんな階段にもあるべきだ下まで転げ落ちないやうに


















 

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