神谷朋子歌集『月ふとりゆく』
<2022年11月8日>
「かりん」の神谷朋子さんが第1歌集を上梓されました。
(本阿弥書店 2022年10月10日 2,700円+税)
産む自由、産まざる自由を問はれをり天かける月ふとりゆく頃
歌集のⅠ~Ⅲ部中、Ⅰ部にこの1首があります。
栞文を小島ゆかりさん、小塩卓哉さん、川野里子さんがお書きになっています。
神谷さんは私が入会するずっと前から「かりん」におられて、
小塩さんの文章によるとⅠ部は比較的初期のうたを収めてあるということです。
私はこちらの歌集の掉尾に置かれている
木犀と土星が出てくる1首が好きなのですが、
「月ふとりゆく頃」のうたは
その1首とも響き合っているように感じます。
歌集から、特に印象に残った作品をご紹介いたします。
忌みごもる春の夕暮れ 後ろ肢を胸に畳んでペディキュアを塗る
ささがにの糸に露おくあかときをしづかにひとは抱(いだ)き寄せらる
「誘はなくてごめんなさい」と言はれたり さうか誘はれなかつたと思ふ
部活やめるといつて泣き出し泣き止まぬ これから長くこの世にある子
最多辞書閲覧記録に「refugee(難民)」世界は彼らを閲覧してゐる
なぜかなぜか学校やめた子を思ふ卒業の歌ひびきわたれば
見舞ふことかなはぬ産屋に子はひとり子を産みにゆく覗いてはならない
木星と土星かさなるこの夕べわたしは赤児をあやして唄ふ
神谷さん、第1歌集ご出版おめでとう存じます。
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