竹中優子歌集『輪をつくる』
<2021年11月8日>
「未来」の竹中優子さん(福岡市在住)の第一歌集が出版されました。
( 角川書店 2021年10月15日 2,200円+税 )
栞文を川野里子さん、東直子さん、黒瀬珂瀾さんが書いておられます。
竹中さんが「輪をつくる」50首で第62回角川短歌賞を受賞なさった2016年、
その頃福岡市のブックカフェ「リードカフェ」で毎月1回「詩と短歌の会」が開かれていて
私も参加していたのですが
その「詩と短歌の会」で受賞作を読む会が企画されて
その折に作者の竹中さんも参加されたことがありました。
その時が竹中さんと初めて会った日だったことなど思い出します。
連作や1首を何度か読んでいた歌人の第1歌集を読むことで
その歌人の作品にもっていた印象がさらに深まったものになったり
新しい面を発見して印象が変わったりします。
歌人の作品世界をこれまでとは違ったかたちでドン!と感じられることがあります。
このたびの竹中さんの第1歌集でも
作品をまとめて読むことの意味を改めて感じたのでした。
竹中さん、第1歌集ご上梓、おめでとうございます。
次は、歌集『輪をつくる』より抄出したものです。
身近な人間関係を詠んだうたに
ハッとしたり、胸に刺さったりすることが多かったので
そうした作品が多くなりました。
汐入町のバス停に立つ「夢があるなんていいね」とたまに言われる
さっきまで一緒だった友バス停に何か食べつつ俯いている
呼ばれない飲み会増えて水底をするりするりと夏がはじまる
才能がないと言い出すひとがいてこんな感じかなって顔で聞く
かわいそうなひとからわたしを慎重にしんちょうにただ引き剝がしてゆく
素顔で生きてきたからシミも勲章と笑う女の顔が醜い
この人を傷つけないで黙らせたいという用途で作るほほえみ
体重を話したりする風の日のとおい家族が顔を合わせば
朝の電車に少しの距離を保つこと新入社員も知っていて春
上手く行かないことをわずかに望みつつ後任に告ぐ引継事項
センス良いさすがわたしの友達と思いつつ聞くあなたの罵倒
娘だと言ってその人の下の名を答えられずに受付に立つ
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